【名作ゆかりの温泉宿】 暮らし・レジャー・エンタメ

2021年5月10日

~『進撃の巨人』の故郷に立つ別世界のホテルで、絶景の”壁”を眺める~
大分県
奥日田温泉 うめひびき

名作マンガ『進撃の巨人』作者の諫山創氏は、ご自身のブログで、故郷、日田市大山町についてこう書かれています。「山に囲まれたこの町を窮屈に思い」「いつかこの壁の外に出て広い世界に」「この大山町が進撃の巨人の舞台になっているのです」。そんな言葉に導かれ、大山町にある唯一の温泉宿、「奥日田温泉 うめひびき」へ出かけてきました。

2017年に新築された別邸「鶯宿(おうしゅく)」。全室に温泉露天風呂やテラスが付いている。

大分県西部、福岡や熊本と県境を接する日田市。その真ん中あたりに位置する大山町は、農村研究者にはとても有名な町。「梅栗植えてハワイに行こう」というキャッチフレーズのもと、農家の多くが梅の木を植えて所得を高め、パスポート所持率日本一の町になったこともあるのだそうだ。

そんな町の梅農家に生まれたのが『進撃の巨人』作者である諫山創氏。故郷について書かれている言葉のはしばしから、大山町へのあたたかい思いを感じることができる。今回紹介する、「奥日田温泉 うめひびき」の前身である「豊後・大山ひびきの郷」についても、数々のエールをおくっている。

「奥日田温泉 うめひびき」客室から眺めた大山町。夜は地上の星のように灯りがともる。

「豊後・大山ひびきの郷」は、2002年、第三セクター方式で誕生した。梅酒製造を行う工場を併設した地域振興のかなめとなる温泉宿である。諫山氏のご実家で育てている梅も、ここで梅酒となり販売されている。2017年には、JR九州傘下となり、露天風呂付き客室を新設するなど、ゆったりと贅沢な時間を過ごせる宿へと衣替えしている。

「梅酒蔵おおやま」で造られている梅酒。『進撃の巨人』ラベルの限定品も販売

日田駅より車で約25分。大山川がつくりあげた深い渓谷を見下ろす高台に「奥日田温泉 うめひびき」は立っている。ロビーや客室、浴室からは、まるで対面するように響(ひびき)渓谷が立ち塞がっている。渓谷から左へと視線を移すと、眼下に小さな集落が広がる。マンガの舞台である「壁の中の町」を思い起こすようなこの眺め!進撃ファンにはたまらない魅力がある。「渓谷が朝もやに包まれる頃の眺めも本当に幻想的なんですよ」とスタッフの関さんが教えてくれた。

大浴場の近くから見た圧巻の響渓谷。

お風呂から、客室から、響渓谷は場所により微妙に見え方が異なる。岩盤がむき出しになったところが二ヵ所あり、うち上流側は、一昨年の水害時に一部が崩れ落ちたのだそうだ。まるで生きているかのように“壁”も形を変えていく。夜になると切り取られた細い空に無数の星がまたたき、集落の小さな灯りが旅愁を誘う。閉ざされているからこその感覚が呼び覚まされていくようだ。

「鶯宿」の客室露天風呂。ひと晩中、入浴できるのがありがたい。

ウエルカムドリンクは完熟梅ジュースと梅酒ショコラを客室で。

渓谷を見渡せる客室は、申し分のない居心地の良さ。冷蔵庫に用意されたドリンクを手に、何時間でも景色を眺めながら過ごせる。半数以上の部屋に温泉露天風呂が付いているためか、別棟にある大浴場が混み合うこともなさそうだ。加水・加温・循環・消毒ありの温泉は、弱アルカリ性らしいスベスベとした感触を楽しめるうえ、広さも充分。何より夕焼け空や渓谷美を眺めながら入浴できる気持ちの良さは、何ものにも代えがたい。

食前酒は2種類の梅酒。一年熟成の「梅酒おおやま」と三年以上寝かせて造る「熟成梅酒ゆめひびき」。「熟成梅酒ゆめひびき」は今まで飲んだことのないようなとろりっとした濃厚な味わい。

クレソンと桜鯛の鍋。たっぷりのクレソンが美味でした。

釜炊きのお米がおいしい朝ごはん。完熟梅甘酒、黒梅だれ豆腐など朝食にも梅がいろいろ。

夕朝食は個室、または仕切りのある広間でいただく。食前酒はもちろん梅酒。諫山氏も絶賛していた三年熟成の「熟成梅酒ゆめひびき」は、アルコール度数が20度もある香り高い豊潤な味わい。季節替わりのおいしいお料理に合わせて、チビチビと飲むのがオススメだ。鍋に梅干しが入っていたり、お刺身に梅煎り酒が添えられていたり、地元素材も取り入れた全11品のコースが基本。中でもおいしかったのが大山産のクレソン鍋。風味と歯ごたえがしっかりと感じられ、お腹いっぱいなのに箸がすすむ。

日田駅に飾られていたイラストパネル。温泉以外の進撃スポットもぜひ。©諫山創/講談社

翌日は、日田市に点在する進撃スポットを巡ってきた。日田駅前に立つ「リヴァイ兵士長像」、大山ダムに立つ「エレン・ミカサ・アルミンの少年期の銅像」、「道の駅 水辺の郷おおやま」内に移設オープンしたばかりの「進撃の巨人 in HITA ミュージアム」など、いずれも「奥日田温泉 うめひびき」から車で5〜25分ほど。ミュージアムでは、ラフな下書き原稿や、友達からの寄せ書き、諫山氏の子どもの頃の写真など、プライベートにも突っ込んだゆかりの品々が展示されている。展示物からも飾らないお人柄が伝わってくるようだ。地元の方の話によると、「時たまお父さんもやって来る」とのこと。さすが故郷!ファン必見の進撃スポットだ。

マンガの世界が再現されているみたいな大山ダムの銅像。映える記念撮影スポットになっている。©諫山創/講談社

道の駅の敷地内に移設オープンしたファン必見のミュージアム。入館無料。©諫山創/講談社


奥日田温泉 うめひびき

大分県日田市大山町西大山4587
TEL.0973-52-3700(10:00~18:00)
【アクセス】
・JR久大本線日田駅より要予約で送迎約25分(15:00または16:00)
・大分自動車道日田I.C.より国道212号経由、約16km
https://www.umehibiki.jp

【泉質データ】
弱アルカリ性の単純温泉。源泉温度が37℃と低めのため、加温循環し、かつ加水、消毒している。炭酸水素イオンの割合が高く、スベスベとした肌感触が楽しめる。露天風呂付きの男女別大浴場「緑宝(りょくほう)」「青軸(あおじく)」は、男女日替わり。このほか宿泊者専用の貸切り温泉も3室あり90分1100円で利用できる。
【宿泊データ】
客室は全32室。本館4室を除く28室が渓谷に面していて眺めを楽しめる。32室中、温泉露天風呂が付いている部屋は19室。湧かし湯の内風呂付きの部屋は5室、シャワーブースのみの部屋が8室。1泊2食2万6550円~、温泉露天風呂付きの場合は1泊2食3万2050円~。


『進撃の巨人』

諫山創/講談社
人を食べる巨人と、壁の中での生活を強いられる人間との戦いを描いたダーク・ファンタジー。2009年9月9日発売の『別冊少年マガジン』で連載が開始され、2021年4月9日に完結した。累計発行部数は1億冊を超え、世界各国でも人気を博している。6月9日には最終34巻のコミックが発売。また2021年冬にはNHK総合テレビでアニメ版の最終シリーズが放映される予定。

 

 

 


温泉ライター 西村理恵

雑誌やテレビなどで温泉の魅力を発信。入湯数は国内外で1000湯以上。日本温泉地域学会理事、(公財)中央温泉研究所理事。「ねこ温泉 いぬ温泉」プロジェクト主宰。
https://catdogonsen.com

 

※価格には、消費税、入湯税が含まれています。
※新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、お出かけの際は各自治体などの最新情報をご確認ください。

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