ハウスメイト

  • facebook
  • twitter

くらしの情報箱

【名作ゆかりの温泉宿】~岸辺露伴の祖母宅は会津東山温泉にありました~福島県 会津若松 東山温泉 向瀧

【名作ゆかりの温泉宿】~岸辺露伴の祖母宅は会津東山温泉にありました~福島県 会津若松 東山温泉 向瀧

映画「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」で、若き岸辺露伴(長尾謙社)がひと夏を過ごす祖母宅の舞台となった「向瀧(むかいたき)」。監督の渡辺一貴氏が、「ここでぜひ撮影を」と強く希望した温泉旅館です。向瀧のどこに惹かれたのか、その魅力を探るため会津へと出かけてきました。

擬宝珠のついた橋を渡って向瀧へ。

会津のシンボル・鶴ヶ城から東へ4㎞。湯川が作り出す細長い渓谷沿いに東山温泉は開けている。渓谷の入口近くに、東山を代表する宿、向瀧がたっている。

湯川添いの細い道は印象的な場面で使われている。ファンらしき人がここを歩く姿も。

向瀧は、これまでも数多くのメディアで名旅館として紹介されてきた。会津藩から受け継いだ自然湧出源泉を大事に守り、明治・大正・昭和と造築されてきた建物を磨き上げ、四季折々の会津の味を客室まで運んでくれる。

作品では蜘蛛も重要な役割を。向瀧近くでも立派な蜘蛛の巣を発見。

中でも庭の風情はすばらしい。初夏にはホタルが舞い、夏には蝉時雨が降り注ぎ、冬には雪見ロウソクに照らされた庭を眺めることができる。客室から中庭を眺めていると、背後にそそり立つ山と庭とがつながっているようで、深山にでもやってきたかのような心持ちになる。

ホタルの時期、見物のため開放されている「松風の間」。ここも撮影場所の一つ。

この庭を自ら造っているのが六代目の平田裕一さんだ。向瀧に戻って32年。その間、大きな作品としては8本の映画やドラマの舞台になったと言う。

「『聖の青春』の時には、お客様から、対局はどこで行われたんですか?と、『ラプラスの魔女』の時には、櫻井君の部屋はどこですか?という問い合わせが多かったです。でも今回の岸辺露伴は、今までとちょっと違っています」と平田さん。映画公開前より、ネットで事前情報を検索したファンが、向瀧のホームページ画像などと照らし合わせて、この場面はこの部屋では? この道をこの方向に歩いたのでは? などカットごとに撮影場所を探す人が多く、今までになく大きくて深い反響が続いているのだそうだ。

向瀧と会津を愛する六代目の平田裕一さん。

そしてもう一つ、平田さんにとって初めてだったのが、「同じ監督さんが、続けて二度、向瀧を舞台に使ってくれた」こと。渡辺一貴監督は2022年、テレビドラマ『雪国 -SNOW COUNTRY-』で向瀧をロケ地に選んでいる。今回は、向瀧の魅力を分かった上で、再度、映画の撮影に臨んだということになる。

撮影に使われた「菊の間」は10畳+4畳半。
奥まった場所にあり庭がすぐそこにあるため「雨を降らせやすかった」そうだ。

どこに惹かれたのか、渡辺監督に話をうかがってきた。「向瀧は傾斜地にたっているので、庭に高低差がありますし、建物内にも多くの階段があります。ですので動きがあり、説得力のあるシーンが撮影できます。貸し切りではなく、営業を続けている中で撮影をしたこともあり、現役感というか、人の温かみというか、そんな空気感も画面に出せたのではないかと考えています」。さらに「会津若松を拠点にすれば、喜多方や霧幻峡、大内宿など、撮影にうってつけの場所が点在していて、これも魅力でした」。以前に、ロケ地を探すため、2泊3日で東北各地を巡ったそうだが、限られたエリアにこれほど撮影に適した場所が集中していたのは会津だけだったと言う。作品にも、美しい会津の風景が散りばめられている。

階段と廊下が印象的な館内。

懐かしい日本を感じられる会津地方。平田さんの言葉を借りると「一番後ろで何とか踏ん張っていたのに、いつの間にかそれを評価してもらえる時代になった」ということなのだろう。昔気質の上質な会津のもてなしを、150年以上、地道にコツコツと続けてきた向瀧は、日本を代表する「名作の宿」として、映像文化の中にもその姿を留めている。

作品にも登場する貸し切り風呂。撮影後、プライベートで向瀧を訪れた渡辺監督も「せっかちで
長湯できないタチですが、この貸し切り風呂にはなぜかゆっくり入れました」と話してくれた。
数々の撮影の舞台となった離れの間。床にかかる鯉の軸は、平田家の遠縁にあたる
日本画家が描いたもの。向瀧にとって縁のある名画だ。

向瀧

福島県会津若松市東山町大字湯本字川向200
TEL. 0242-27-7501(7時30分~21時)
【アクセス】
・JR磐越西線会津若松駅より市内循環バス15~35分の東山温泉駅下車、徒歩1分
・JR東北新幹線郡山駅より高速バス85分の会津武家屋敷前下車、徒歩15分
・磐越道会津若松ICより国道49号経由で約8.5㎞
https://www.mukaitaki.com

数品ずつお盆で部屋へ運んでくれる夕食。会津のこづゆ、会津地鶏と夏野菜の鍋、
伝統の鯉の甘煮など、滋味深くておいしい品々ばかり。

【泉質データ】
浴室はそれぞれ男女別に、熱めの「きつね湯」、シャワーのある適温の「さるの湯」の2ヵ所。そのほか貸し切り風呂が3カ所あり空いていれば自由に入浴できる。温泉風呂の付いた客室も3室。泉質はいずれもナトリウム・カルシウムー塩化物・硫酸塩泉でどの浴槽も源泉100%かけ流し。会津藩から受け継いだ温泉は、お肌にハリを与えてくれるようなパワーのある湯質。

大浴場「きつね湯」にはシャワーも蛇口もない。館内の温泉はすべて同じ泉質だが、
熱めの「きつね湯」はガツンと体に力が注がれてくるような入浴感。

【客室データ】
中庭を囲むように和室24室が配置されている。明治、大正、昭和初期に建造された客室に常に手を入れ、全室洗面所やお手洗いなどを設置。一部、庭の眺めがない客室もありお手頃に宿泊できる。1泊2食2万1050円(中庭の見える部屋は2万4350円)〜(2名1室の場合の1名料金)

お着きのお菓子は東山名物の水ようかん。
料理長が手作りし、係の女性が客室まで運んでくれる。

【日帰りデータ】
すべての浴槽を毎日換水し清掃をしているため日帰りでの入浴は行っていない。

映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』
大ヒット上映中! © 2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会 © LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社

荒木飛呂彦初のフルカラー漫画を、2023年5月26日、実写映画として公開。ドラマ『岸辺露伴は動かない』の制作陣が再結集し、その世界観を受け継ぎつつ、特殊能力を持つ漫画家・岸辺露伴のルーツを探るというファンにはたまらない作品となっている。

温泉ライター 西村理恵

雑誌やテレビなどで温泉の魅力を発信。入湯数は国内外で1000湯以上。日本温泉地域学会常任理事、(公財)中央温泉研究所理事。「ねこ温泉 いぬ温泉」プロジェクト主宰。
https://catdogonsen.com

※価格には、消費税、入湯税が含まれています。
※新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、お出かけの際は各自治体などの最新情報をご確認ください。

関連キーワード

SNSシェア

おすすめ記事