寒い季節の安心・安全入浴テク

寒いときこそお風呂。ぬくぬくポカポカ、身も心もリラックスしたいものです。ただし、「ヒートショック」や「浴室熱中症」には注意が必要です。入浴前の準備、入浴中の心得、入浴後にやっておきたいポイントをしっかり押さえて、安心・安全な入浴を楽しみましょう。

命を落とす危険もある「ヒートショック」

ヒートショックは、短時間のうちに血圧が上下に変動し、それをきっかけに血管や心臓に大きな負担がかかる現象のことです。特に寒暖差の大きい寒い季節は、ヒートショックのリスクが高まります。
暖かい部屋から気温の低い脱衣所や浴室内に入ると血圧は上昇します。入浴中に身体が暖まると血圧は下がり、入浴後の暖まった状態から再び寒い脱衣所に戻ると血圧は上がります。ヒートショックが生じると、脳内出血、大動脈解離、心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こすことがあります。

住居で寒暖差がある場所

“のぼせた”では済まされない「浴室熱中症」

長湯や高温で入浴していると、体が温まって血管が広がり、血圧の低下を引き起こして体調不良になることがあります。これが浴室熱中症です。よくお風呂で“のぼせた”という人がいますが、のぼせるのは軽い熱中症になっている状態なのです。
入浴によって体温が40度を超えてしまうと熱中症の症状が出始め、めまいや立ちくらみ、ふらつき、ほてりなどの症状が見られます。ひどい場合には吐き気や頭痛、動悸などの症状を引き起こし、最悪の場合には浴槽で溺れてしまうこともあります。
そもそも浴室内は気密性が高い構造のため高温多湿になりやすいことも、熱中症のリスクを高くしています。

心がけたい安全な入浴法

どうすればヒートショックや浴室熱中症を防げるのか。安全な入浴法をご紹介しましょう。

1. 入浴前

入浴は食後１時間ほどたってから

食事をして1時間以内に入浴すると、急激な血圧の低下を招いて湯船で意識を失うなどの危険性があります。入浴は食後1時間ほど時間を空けてからがいいでしょう。

脱衣所と浴室を暖める

寒暖差によるヒートショックから身を守るため、脱衣所は暖房器具で暖めておきます。浴室は蒸気が立つようにシャワーから給湯するのも一つの方法です。お湯がたまったらよくかき混ぜ、浴槽のフタを外しておきます。床には「すのこ」やマットを敷くのもいいでしょう。

水分補給を行う

浴室熱中症による脱水状態を防ぐため、のどが渇いていなくてもコップ一杯程度の水を飲むことを心がけてください。

かけ湯をする

湯船にいきなり入るのは避け、かけ湯をしてから入りましょう。特に寒冷な温泉地でお風呂を楽しむときは、外気温が非常に低いので急激な温度変化が体に負担をかける可能性があります。

2. 入浴中

40℃前後のお湯に10～20分

入浴は40℃前後のぬるめのお湯に10～20分程が目安。温浴効果がある入浴剤を使うのも一つの方法です。湯船に入る時間がとれないときには、大きめの洗面器にお湯を張り、5分程度くるぶしまで浸して足湯しましょう。

濡れタオルを頭に

湯船に入ったら、濡らしたタオルを頭に乗せます。濡れタオルは頭部の温度上昇を抑えるので、のぼせを防ぐ効果があります。

出るときは「ゆっくり」と

湯船から出るときは、「ゆっくり」を心がけてください。浴槽の縁に座って呼吸を整え、ゆっくりと立ち上がり、湯船から出ます。寒冷な温泉地での入浴の際には、全身浴→半身浴→足湯の順で出ると、体への負担を最小限に抑えることができます。

3. 入浴後

保温・補水

靴下をはいて湯冷めを防ぎます。また入浴前と同様、コップ一杯同程度の水分補給することも心がけてください。

５分以内に潤いケア

できるだけ早く潤いケアをしましょう。ボディを潤すタイミングは、お風呂上がり5分以内がベスト。柔らかいバスタオルで、保湿剤をタップリ塗ります。特に乾燥が気になる部位にはクリームタイプやバームタイプの塗り重ねがおすすめです。

高齢者の入浴

高齢者はヒートショックにも浴室熱中症にもなってしまうリスクが高く、注意が必要です。

家族に一声かけて

同居している人がいれば、入浴前には万が一に備えて一声かけておきましょう。

入浴を控える勇気も

体調が悪いと感じたときは入浴を控えてください。また、朝風呂も控えましょう。夜の間に発汗や排尿によって体から水分が排出され、血液が濃縮された状態になっているからです。

アルコールが抜けてから入る

入浴は食後30分～１時間以上経ってから。食事中に飲酒したときには、アルコールが抜けてから入浴してください。

湯温の目安は41℃以下

お湯につかる時間の目安は10分以内。湯温は41℃以下がおすすめです。お湯から出るときには、ゆっくりとした動作を意識してください。

正しい入浴で健康な毎日を

入浴には「温熱作用」「静水圧作用」「浮力作用」の三大効果があります。温熱作用には血管拡張やリラックス効果、血流効果が、静水圧作用には心肺の活発化とストレッチ効果が、浮力作用には運動機能の改善、リハビリ効果、リラックス効果が期待できます。
シャワーだけで簡単に済ませたいときもあるでしょう。しかしシャワーでは汗や汚れは洗い流せても、筋肉の疲れやコリは取ることはできません。寒い季節だからこそ入浴を楽しみ、健康な毎日を送りましょう。