社宅の知識
2025.12.10
【人事・総務のための福利厚生】連載⑩社宅規程の再点検~基準賃料の見直し
好評連載中の「人事・総務のための福利厚生」です。社宅に関する話題をわかりやすく解説します。私は、福利厚生専門誌「旬刊福利厚生」を発行する株式会社労務研究所の可児俊信(かにとしのぶ)です。福利厚生の事例の蓄積からたくさんお伝えします。
手伝っていただくのが、ハウスメイトパートナーズの三原さんです。
【前回の記事はコチラ】
三原
三原です。可児さん、今回もよろしくお願いします。知り合いの人事の方も、この連載を楽しみにしております。さっそくですが、昨今の物価上昇により社宅ご担当者様のご相談があります。社宅を探している社員から、「なかなか見つからない」との声が聞こえてきます。
見つからない理由は、「希望物件の賃料が高くて、社宅規程内では収まらない」とのことでした。
賃料が上がっているのは知っていますが、かといって会社も持ち出しを増やすこともできず困っています。
可児
今は、どの会社も同じように悩まれています。
三原
賃料の上昇と社宅規程は、どう関係しますか?
可児
借上社宅では、入居する社員は、賃料の一定割合(賃料割合)を社宅使用料として負担し、会社が徴収します。福利厚生専門誌「旬刊福利厚生」の調査では、賃料の25%相当額が平均的な賃料割合です。残りの75%の賃料相当分を会社が負担しています。例えば、12万円の賃料であれば、入居社員の社宅使用料負担は3万円、会社の賃料負担は9万円となります。
会社は、福利厚生として適正な社宅である必要があるため、賃貸物件の賃料の上限を社宅規程で定めています。それを基準賃料といいます。賃料が基準賃料以下である物件が社宅として認められます。
三原
基準賃料を超える物件を希望した場合はどうなりますか?
可児
社宅規程の規定によります。基準賃料を超える物件は認めないとする規程がある一方で、基準賃料を超える賃料部分を社員が全額負担するなら認めるとする規程もあります。
今日のテーマの賃料については、図表①で全国主要地域での賃料の上昇を示しています。

三原
全国的に賃料が上がっていますね。全国平均では、8年間で6%増、大都市部ではもっと上がっています。同じ賃料帯では従来とは物件が異なってきますね。
可児
でも、社宅規程が定める基準賃料は引き上げられていません。「旬刊福利厚生」の調査では、基準賃料は2015年と2025年の10年間では、図表②のように、上がるどころか下がっています。都市部平均で7%も下がっています。そのため、ここ数年の急激な賃料上昇に規程が追いついていません。

三原
賃料は上がっているのに、基準賃料が下がってしまうと、お部屋探しに少し苦労しますね。
可児
物件を探す地場の不動産仲介業者も、社宅規程にあった物件が見つからなくて困っています。基準賃料を引き上げないと、物件探しが難航するのはいうまでもありません。
しかし、基準賃料を引き上げると会社の費用負担が増えてしまいますし、入居社員の負担も増えます。仮に基準賃料を月額10,000円引き上げた場合、入居社員の社宅使用料は、賃料割合が25%なら、月額2,500円、年間で30,000円の負担増です。一方、会社は年間で9万円の負担増です。基準賃料の引上げが進まないのは、会社と入居社員の負担増を避けてきたからです。
基準賃料を上げないと、入居する社員は勤務地から遠距離の物件を探さざるを得ません。それでは、社員満足度が低下します。これは大きな問題です。
よって、物件が見つからなければ、基準賃料を超えていても会社は特例として契約している実態もあります。
三原
社宅担当者さまとしては賃料を上げるのは経費面もあるし苦労がかかりますね。基準賃料の引き上げ以外にもいい方法はありますか?
可児
基準賃料を超えた物件でも、超えた賃料相当額を全額本人が負担するのではなく、例えば、会社負担50%、本人負担50%として、入居社員の負担増を緩和する方法もありましたが、会社もしくは個人で負担することは同じことなので、運用上を考えるとやはり基準賃料の改定が解決策となります。
その方法としては、入居社員の賃料割合を引き上げて、会社の負担を軽減し、同時に、基準賃料を引き上げれば、会社の負担増は緩和されます。入居社員の負担は増えますが、物件の選択肢は広がります。
三原
転勤用社宅の場合は、お部屋探しエリアを遠くするということはよくあります。社宅担当者としては福利厚生面として人材の確保も重要な問題ですし、経費削減も重要な点だから個人負担の増加にはなりますが、物件の選択肢は広がりますね。
<次回へ続く>
可児 俊信
千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科 教授
株式会社労務研究所 代表取締役/福利厚生専門誌『旬刊福利厚生』発行
企業や官公庁における福利厚生制度のコンサルティングを行う。福利厚生や企業年金などをテーマとした著書、寄稿、講演多数。
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