社宅の知識
2026.04.01
【人事・総務のための福利厚生】連載⑬会社から見た社宅のメリット
好評連載中の「人事・総務のための福利厚生」です。社宅に関する話題をわかりやすく解説します。
私は、福利厚生専門出版社である株式会社労務研究所の可児俊信(かにとしのぶ)です。
手伝っていただくのが、ハウスメイトパートナーズの三原さんです。
【前回の記事はコチラ】
三原
三原です。可児さん、今回もよろしくお願いします。企業の皆様にとっても関心の高いテーマですので、しっかり学ばせていただきます!
可児
今日は、会社にとっての社宅制度のメリットです。その前に、社宅制度は福利厚生の一環ですが、福利厚生のトレンドを見てみましょう。

可児
上の図表は、福利厚生の目的には、大きく2つあることを示しています。会社の最終目的である企業価値の向上に向けて、2つの道筋があります。1つは会社の人財戦略に沿って人財の質を向上させ、企業価値の向上につなげる道筋です。
三原
人材戦略とは、人的資本経営、健康経営、DE&I、ウェルビーイングといったものですね。
可児
そうです。人財戦略は目的に過ぎませんので、人財戦略を実現する手段が必要です。それが福利厚生です。育児支援の福利厚生を強化する、疾病予防につながる福利厚生を強化するといった手段を用います。
三原
たしかに、経営層の「健康経営だ」のかけ声だけではなかなか現場の社員は健康になりませんからね。具体的な仕組みが大切だということですね。
可児
もう一つは、福利厚生を用いて従業員の満足度やエンゲージメントを向上させて、従業員の離職を抑え、定着させ、企業価値の向上につなげていく道筋です。
三原
福利厚生を従業員の「エンゲージメント(貢献意欲)」を高める大切な手段とするのですね。
可児
今、人材確保が困難になっている中で、福利厚生をエンゲージメント向上の手段とする傾向が強まっています。
三原
では、社宅という福利厚生が従業員の定着に繋がるのは何故ですか?
可児
次のグラフのように生活者世帯では、支出のうち住宅費支出が食費に次ぐ2番目に重い支出となっています。

三原
近年、賃貸物件の賃料も不動産価格も高騰していますし、社員の皆様の実感値としても住宅費の負担感は増しているはずです。
可児
福利厚生で住宅費支出を支援すれば、従業員の会社への満足度・エンゲージメントも向上します。万一、転職すれば、手厚い住宅費支援がなくなることになり、「この会社で頑張ろう」という気持ちになります。
三原
住宅費支援の福利厚生は、大きく「住宅手当・家賃補助」と「社宅の提供」がありますが、どのように比較できますか?
可児
どちらの方法もメリットがあります。住宅手当等は制度運営に手間がかからないというメリットです。金銭の支給ですから。しかし税制・社会保険面での優遇はありません。
三原
確かに給与として加算されると、税・社保が控除対象になるので、社員が実際に受け取る手取り額は少なくなってしまいます。
可児
社宅等は賃貸契約管理・物件管理に手間がかかりますが、税制・社保面では大変優遇されており、税や社保の控除がないので、会社のかけた福利厚生費がそのまま従業員の受益に繋がります。
三原
会社が投じたコストが、目減りすることなく社員の豊かさに直結する。まさに投資対効果が高い施策と言えますね。
可児
そのとおりです。さらに現金支給と比べて福利厚生は手間がかかりますが、その手間が従業員に会社への恩恵感を高めるのです。
三原
確かに、結婚祝金を給与と一緒に振り込まれるよりも、大切な節目に手渡しされる方が、会社からの温かい「お祝いの気持ち」をより強く感じられますよね。
可児
このように社宅のメリットを福利厚生の観点からお話ししましたが、もちろん、それ以外のメリットもあります。
社宅は、人事異動において転勤を円滑に行うというメリットです。近年、従業員の意に沿わない転勤が問題となっています。
三原
お客様からもそういった声が聞こえてきます。
可児
転勤を伴う異動の発令から着任までの限られた日数で、赴任先で住居を探して、引き継ぎの挨拶や転校の手配等と並行して引越しまで完了させるのは異動者にとって大変なストレスです。社宅があれば、ストレスの軽減に繋がります。
三原
住まいの確保がスムーズに進むだけで、社員の方は新しい業務に集中しやすくなりますし、ご家族の安心感も全く違いますね。
可児
都市部に自宅を持たない地方出身者にとっても、若手社員時代の寮制度は本当にありがたいですよね。私自身地方出身でしたので、独身寮のある会社は魅力でした。
三原
社宅をリテンション・定着に活用できることがよくわかりました。福利厚生は人件費としてみれば給与よりもはるかに低いコストで賄えます。そうでありながら、給与に劣らない定着効果があります。大切な人財に長く活躍してもらうために、社宅制度をさらに戦略的に活用していきたいですね!
<次回へ続く>
可児 俊信
千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科 教授
株式会社労務研究所 代表取締役/福利厚生専門出版社
企業や官公庁における福利厚生制度のコンサルティングを行う。福利厚生や企業年金などをテーマとした著書、寄稿、講演多数。
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