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2021.08.03
【知り隊!会社訪問】国分グループ本社株式会社様
経営企画部 柚木 彩花さん
マーケティング・商品統括部 南山 博さん
新たな食の価値を創出し、日本全国の食卓に感動を届けたい
「食のマーケティングカンパニー」として、多種多様な食品の卸売を担う国分グループ本社株式会社。食品メーカーの顔も持ち、70種ものラインアップを誇る「缶つま」シリーズをはじめ、ユニークな自社商品を展開しています。マーケティング・商品統括部の南山博さんと経営企画部の柚木彩花さんに、同社の歴史や事業内容、注目の商品などについてお話を伺いました。
モノ売りとコト売りの両輪で、多彩な食のあり方を提案
創業は1712年。江戸は日本橋で、創業家の四代國分勘兵衛が呉服店「大国屋」を開いたのが国分グループのスタートでした。創業期から醤油の醸造も手がけ、土浦でつくった醤油を日本橋に送ることなどで得た流通のノウハウをもとに、食品卸売業へと舵を切ったといいます。
柚木:卸売業は明治時代からはじめました。食のライフラインを担う「食のマーケティングカンパニー」として、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売業様、レストランや居酒屋といった外食産業様、また学校や介護施設のお客様などにも食品をお届けしています。
同社には現在、1万社の仕入先があり、60万にも及ぶ商品を取り扱っています。取り扱い商品と販路の豊富さは食品卸業界のなかでも群を抜いており、3万5000社を超える得意先に多種多様な商品を展開しています。卸売業という役割から同社の名前が表に出る機会は限られますが、私たちの暮らしに欠かせない存在です。
柚木:卸売業には「モノを売る」というイメージがあるかもしれませんが、当社は全国各地・世界各国のこだわりの食品やお酒を紹介したり、各地で食の体験イベントを実施したりと、生産者・メーカー・小売業様向けにさまざまな支援活動をおこなう「コト売り」の視点も大切にしています。
たとえば、近年需要が伸長している「家飲み」に関するコト売りでは、味覚センサーによる分析と専門家による官能検査を掛け合わせた「食と日本酒のマッチング」を展開。店頭に並ぶ惣菜と相性のよい日本酒の組み合わせを提案しています。
南山:家飲みについては、「飲み活ラボ」という新たなシリーズの商品を発売しました。最近はお酒を選ぶときに、「糖質」や「カロリー」など健康についてのキーワードを重視する方が増えてきました。そこで、「タンパク質」や「食物繊維」をおいしくとれるおつまみを開発し、食事にも気を遣った飲み活を提案しています。
コト売りの視点から生まれた新商品としては、近年のアウトドア人気の高まりを背景に開発された「”CAN”Pの達人」も注目を集めています。
南山:“CAN”Pの達人は、ホットサンドやパエリアの具材が入った缶詰です。ホットサンドメーカーやメスティン(野外用の調理器具)を使って、アウトドアでも手軽に調理を楽しめます。もちろん、アウトドアやキャンプの機会だけではなく、ご自宅でもおいしく召し上がっていただけます。
食を通して、よりよい未来を拓く
国分グループには、大正時代から続く桐印の「日本橋漬」や、K&Kのマークでおなじみのコンビーフの缶詰など、長年にわたり愛されている自社商品が数多くありますが、2010年から販売されている「缶つま」も、同社を代表するロングセラーになっています。食材やおいしさにこだわり、高級缶詰ブームを巻き起こした商品です。
南山:実は当社では、缶つまを発売する前から高級缶詰を販売していました。他社との差別化をどう図るかと考えたときに、価格訴求ではなく、価値訴求を目指したことが高級缶詰を手掛けたきっかけです。
缶詰の売り場は、安価で手軽に購入できる商品がずらりと並んでいます。同社は価格競争から脱却するために、高級缶詰をいち早く市場に投入しましたが、はじめは生活者にはなかなか受け入れられなかったといいます。「缶詰=手軽な保存食」というイメージが根づいた市場では、500円前後の高級缶詰は異質な存在だったのです。
南山:ほかの缶詰と一緒に売り場に並ぶと、どうしても安価な商品と価格面での比較をされてしまいます。そこで、売り場を変える発想を持ちました。当社には、お酒を扱うお得意先と数多くの取り引きがあります。この当社の強みを活かすべく、「お酒に合う缶詰」というコンセプトを前面に打ち出し、お酒やおつまみの売り場で販売していただくように提案したんです。缶詰の売り場だと500円は高くても、おつまみとしてなら十分に手を伸ばせる金額です。
お酒と一緒に、気の利いたおつまみを楽しみたい。そんなニーズに着目して、既存の商品を缶つまシリーズとして改良し、パッケージも高級感ある装いに統一。「広島県産 かき燻製油漬け」をはじめ14種類の商品を発売した初年度から、1億8000万円の売り上げを記録したといいます。商品は同じでも、コンセプトを明確にし売場を変えることで、売上げが大きく変化したのです。
南山:日本全国にネットワークを持つ卸売業の強みを活かし、原料の産地にこだわった商品も多く展開しています。この点も、他社の缶詰との差別化につながっているかと思います。
「奇跡のエスカルゴ・ド・ブルゴーニュ」という高級缶詰も、同社の姿勢を象徴する商品の一つです。
南山:最高級のエスカルゴといわれるブルゴーニュ種を、自家製ガーリックバターで仕上げた一品です。ブルゴーニュ種はエスカルゴの本場フランスでは保護育成種に指定されているのですが、じつは三重県の松阪市に、世界ではじめて完全養殖に成功した方がいるんです。
松阪市は国分グループ創業家のゆかりの地でもあります。同市で40年以上も養殖技術を構築してきた生産者の取り組みに敬意を表し、商品化に踏み切ったといいます。
南山:長年エスカルゴの養殖に取り組まれてきた生産者のお話をじっくり伺い、その熱い思いを缶詰に詰め込みました。商品開発にあたっては、素材のよさを活かすために試行錯誤を重ね、発売までに4年ほどの期間を要しています。いまやフランス国内でも食べられない貴重なエスカルゴを、日本の食卓でぜひ召し上がっていただきたいですね。
全国各地の知られざる商品や食材にスポットを当てる取り組みは、同社が運営するwebサイト「食と酒の未来勘所(みらいつぼ)」でも展開されています。
南山:食と酒の未来勘所では、全国の厳選された食品、酒類、各種体験を、クラウドファンディングを通して提供しています。インターネット時代になっても、まだ世の中に知られていない優れた商品はたくさんあります。そういった希少な商品を、みんなでお金を出し合うことで手に入れるという、新たな価値を提供・実現するサービスです。
柚木:地方では年々過疎化が進むエリアも多く、地域のメーカー様などから、「せっかくよい商品があるのに、どう売ればいいのかわからない」といった声を伺います。そこで当社は従来からお取り引きのある企業様のみならず、食に関わる多様な事業者と連携し、新たな価値を創出する取り組みを進めています。
さらにグローバルな観点では、SDGsやサステナブルに関連した商品の提案・販売にも注力し、2020年の11月には「トニーズチョコロンリー」というチョコレートの販売をはじめました。販売元のオランダ・トニーズ社は、チョコレート市場におけるフェアトレードやスレイブフリーを目指しています。日本での正規代理店としてチョコレートの販売やトニーズ社の理念を広めることを通じて、生産地域の社会発展に貢献したい考えです。
南山:トニーズチョコロンリーは、カカオの生産地である西アフリカの地図がかたどられています。チョコレートを割ったときに、一つひとつのかけらの大きさが異なるようになっており、カカオ生産における不平等な実態が表現されているんです。時間はかかるかもしれませんが、こういった商品を広める取り組みにもチャレンジしていきたいですね。
食を取り巻くさまざまな課題の解決や、環境変化に対応することで、新たな価値を創出する。そんな同社の挑戦から、今後も目が離せません。
南山 博(みなみやま・ひろし)
国分グループ本社株式会社 マーケティング・商品統括部 商品開発部 販売業務課 副課長
1996年入社。2008年から現在の部署にて開発商品の販売に携わる。
柚木 彩花(ゆのき・あやか)
国分グループ本社株式会社 経営企画部 広報課 主任
2012年入社。2018年から現在の部署にて広報業務に携わる。
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