【人事・総務のための福利厚生】 社宅情報

2021年4月28日

 《連載①》社宅管理はなぜ必要か

いま、このコラムを読まれている方は社宅管理のご担当者・責任者かと思います。社宅管理は手間がかかるうえ、入居する従業員さん・職員さんからの要望も多くありがちで、大変な業務となっているはずです。
では、なぜこのような社宅管理、もとをただせば社宅制度があるのかについて福利厚生の観点から説明したいと思います。

【目次】
・社宅制度の誕生
・持ち家支援施策
・転居転勤からの必要性
・新卒採用の手段
・借上げ社宅の増加
・専門性の高い社宅管理業務

社宅制度の誕生

いまから75年前、東京をはじめ日本の都市部は戦争によって、住宅の多くが焼失しました。その後、日本の経済成長が始まり地方から都市部に労働者が集まってきました。地方の中卒者が「金の卵」と呼ばれ、貴重な人材とみなされたのもこのころです。地方から来た新卒者は住むところがありません。そこで事業主が住居を用意する必要があり、社宅や寮という制度が生まれました。なお、当時の社宅・寮管理とは建物の維持修繕を指していました。

持ち家支援施策

また事業主は地方の新卒者を従業員等として採用するので、「親代わり」として従業員等を大切にしてきました。彼らを「一人前」にする、当時で一人前とは結婚して世帯を持つ、さらに自分の家を持つことでした。彼らに持ち家を持たせるため、福利厚生として持ち家支援施策がとられました。労働組合もそれを要望しました。

転居転勤からの必要性

企業が成長するにつれ、全国に支店・営業所・工場ができました。よって人事異動による転居を伴う転勤も頻繁になりました。転勤してすぐ住める住居として社宅・寮はさらに重要となりました。こうして全国展開する企業・団体には社宅・寮があります。

新卒採用の手段

ここ数年では、新卒者の採用を容易にするため、入社数年間は社宅・寮を付与する企業等が増えています。住宅手当を入社数年間だけ支給することもあります。いまでも地方出身者にとって住居費は大きな負担だからです。

借上げ社宅の増加

大きな変化もあります。かつては事業主自身が土地建物を所有する「社有社宅・寮」でした。市中に戸建て住宅・マンションの供給が増えてきたことから、自ら土地建物を保有せずそれらを賃貸借契約で社宅・寮とする「借上社宅」が増えています。すると貸主またはその管理会社との契約上のやりとりが必要となり、社宅管理は建物の維持修繕から契約管理へと変わってきました。

専門性の高い社宅管理業務

不動産に関する法律は多岐にわたり複雑です。また契約も民法の原則だけでなく不動産に限った法令も多くあり、専門知識が求められます。
社宅管理担当者の異動が少なく長期に担当しているのも、社宅管理を外部の専門業者に委託するのもそれが理由です。

 

これほど手間とコストのかかる社宅・寮制度があるのは、それを上回るメリットがあるからです。それが福利厚生としてのメリットです。大企業では福利厚生費総額の約半分を社宅・寮にかけています(住宅手当の額は含みません)。
次回は、社宅・寮制度及び社宅管理の福利厚生としての役割についてお話しします。

 

可児 俊信

千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科 教授
株式会社労務研究所 代表取締役/福利厚生専門誌『旬刊福利厚生』発行
企業や官公庁における福利厚生制度のコンサルティングを行う。福利厚生や企業年金などをテーマとした著書、寄稿、講演多数。

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