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社宅の知識

【人事・総務のための福利厚生】《連載⑥》社宅規程の重要ポイント再点検~入居関連費用の負担者

【人事・総務のための福利厚生】《連載⑥》社宅規程の重要ポイント再点検~入居関連費用の負担者

社宅管理のご担当者・責任者の皆さんに、福利厚生に関する情報をさまざまな角度からお届けする「人事・総務のための福利厚生」。


社宅を巡る環境変化があるにもかかわらず社宅規程の改定を怠っていると、思わぬトラブルが発生することがあります。この連載では、これまで入居対象者とその同居者、入居するまでの期限、入居期間と退去に関する規定を点検してきました。
6回目となる今回は、社宅入居に関連する費用とその負担者を点検します。

発生する費用の負担者

毎年、社宅制度に関する調査を実施している福利厚生専門誌『旬刊福利厚生』によれば、入居一時金(仲介料、敷金、権利金・礼金)は事業主が負担しているとの調査結果です。更新料もほぼすべて事業主が負担しています。

また同調査では、毎月発生する費用のうち、
・共益費は全額会社負担とする企業が2割、入居者に何らかの負担を求める企業が8割弱です。
・駐車場代はほぼすべての規程で入居者が負担しています。
・電気、ガス、水道等の光熱費は当然入居者が負担します。町内会費は入居者が負担するのが一般的です。
これら以外に想定外の費用が発生する際に備えて、予め規程に「会社が入居者の負担を必要と認めたその他の費用は入居者が負担する」と定めておくと安全です。

社宅退去時の原状回復

原状回復費については、2020年の民法改正において、入居中の通常損耗や経年劣化については、借主の責任とはならない、ということが明記されました。裏を返せば、この場合の原状回復の費用は貸主負担です。
(ただし、対象となるのは民法改正後に契約が締結されたものになります。)


↓ ↓ ↓ 原状回復費に関する詳細は下記の記事も併せてご参照ください ↓ ↓ ↓

借主の故意・過失等によるものであれば、原状回復費用を借主が負担することが一般的ですが、その費用は入居者の過失や意図的な破損・汚損でない限り、事業主が負担する例が多くなっています。
なお、原状回復費用の額や負担に関する貸主側との折衝は、専門性が高いため、事業主が行うのではなく社宅管理委託業者の委託業務内とするのが望ましい方法です。
業者との業務委託契約書に明記されていない場合は、業者と協議のうえ明記を検討しましょう。

費用負担者の考え方

社宅は、所得税の基本通達にて税法上の要件が記載されています。
「使用者(国、地方公共団体その他これらに準ずる法人を除く)がその役員・従業員に対して貸与した住宅等(当該役員・従業員の居住の用に供する家屋又はその敷地の用に供する土地若しくは土地の上に存する権利をいう)」とされています。
そこでは費用の負担者については定められていません。

よって、貸主との契約上、借上社宅の契約者(借主)は入居者ではなく事業主であるため、賃料をはじめとする費用は事業主から貸主に支払うことになります。ただし、給与控除にて入居者に請求し最終的な負担者とすることは税務上の社宅の要件には反しませんので、労使の合意のうえ、入居関連費用を入居者の負担とすることも可能です。



可児 俊信

千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科 教授
株式会社労務研究所 代表取締役/福利厚生専門誌『旬刊福利厚生』発行
企業や官公庁における福利厚生制度のコンサルティングを行う。福利厚生や企業年金などをテーマとした著書、寄稿、講演多数。

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