社宅の知識
2025.05.14
【人事・総務のための福利厚生】連載⑤人的資本経営と福利厚生

好評連載中の「人事・総務のための福利厚生」です。福利厚生をわかりやすく解説しますので、人事・総務以外の方にも楽しんでいただけます。
私は、福利厚生専門誌「旬刊福利厚生」を発行する株式会社労務研究所の可児俊信(かにとしのぶ)です。福利厚生の事例の蓄積からたくさんお伝えします。
手伝っていただくのが、ハウスメイトパートナーズ従業員のSさんです。
【前回の記事はコチラ】

S
Sです。よろしくお願いします。この連載では、最近よく耳にする人事用語を取り上げています。今日は人的資本経営と福利厚生の関係を取り上げます。

可児
人的資本経営は、もともと投資家が言い出した言葉です。短期的投資をする投資家は別として、長い目で企業の成長を見守る投資家にとっては、社員に投資している会社は短期的には利益が減っても、長い目で見れば、会社が成長し株価も高くなるということがわかってきたんです。

S
どういうことですか。

可児
20世紀は製造業の時代でした。お金をかけて工場をつくり、機械を据え付け、原材料を仕入れ、製品を作り利益をあげてきました。先進国でも人口は増えていて、社員は簡単に採用できていました。21世紀になると、グーグルとかメタといったIT企業が増えています。こうした業種では社員のアイデアやノウハウ、知識をもとに企業は業績を拡大してきました。機械ではなく社員が利益を生み出しています。さらに、先進国においては人口増加も止まり、社員、つまり人の価値が相対的に高まっています。

S
経営資源の三要素であるヒト・モノ・カネが利益を生み出すと教わりましたが、変わっているのですか?

可児
そうですね、20世紀では社員は経営の資源のひとつで、ヒューマンリソース(人的資源)と呼ばれていましたが、今は違います。優秀な社員がいれば、モノ、カネはついてくるということで、社員はお金を生み出す資本(ヒューマンキャピタル、人的資本)となりました。

S
商社とかは以前から「当社はヒトがすべてです」といっていました。

可児
それが業種を問わず「ヒトがすべて」になるということです。これまでは、人件費を払うと言ってきましたが、これからは社員に投資するということになります。

S
福利厚生も費用ではなく、社員の価値を高める投資になりますね。

可児
はい。そのうち、企業のバランスシートに、モノやカネだけでなく、社員の価値が数値化されて載るかもしれません。

S
そうなると優秀な社員を育てる会社とそうでない会社ではっきり経営に差がつきます。

可児
高い給料で社員を集め囲い込むのはもちろん大事ですが、福利厚生で社員のレベルを上げ、さらに定着にもつなげることもより大事になりますね。

S
そういえば、2022年頃に比べて今では人的資本経営という言葉をあまり聞かなくなった気がします。

可児
もともと、人的資本経営は有価証券報告書やホームページで人的投資の実績を公開することになったので注目を集めていましたが、すでに業務にしっかり組み込まれたので話題としては落ち着いたということでしょう。でも人的投資は情報開示するのが目的ではなく、社員のレベルを高め、企業価値を上げるのが目的です。実際に人的投資を高めないといけません。

S
人的投資といえば、リスキリングという言葉がありました。

可児
もともと産業構造が変化する中で、社員のスキルやキャリアを時代に合わせようということです。でも、一定以上の年齢層になると、新しいことに挑戦しようというより、これまで蓄えてきた知識・スキル・経験で仕事を乗り切ろうと考えがちですので、その意識を変えるのがリスキリングです。

S
リスキリングが、社員全員にIT研修を実施するとかITパスポート試験をとらせるというように狭く解釈される傾向もあります。

可児
福利厚生施策で、人的資本の価値を高めるのは、狭く見れば、自己啓発の機会を増やしたり、費用補助をしたりするということです。広く見れば、健康経営も人的資本経営の一環とも言えますので、前回触れた健康関連の福利厚生は人的資本経営実現の手段とも言えます。ダイバーシティ経営の手段としての福利厚生施策も人的資本経営の一環とも言えます。

S
人的資本をどこまで広く解釈するかですね。

可児
社員を大切にし、社員の能力を引き上げる福利厚生施策すべてが人的資本経営実現の手段と言えます。
<次回へ続く>
可児 俊信
千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科 教授
株式会社労務研究所 代表取締役/福利厚生専門誌『旬刊福利厚生』発行
企業や官公庁における福利厚生制度のコンサルティングを行う。福利厚生や企業年金などをテーマとした著書、寄稿、講演多数。
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