くらしの情報箱
2024.04.24
【いま注目の情報箱】熱いだけじゃない?!サウナ文化研究家こばやしあやなオススメ「ととのう!サウナ習慣」
すでにサウナに虜の方も、まだまだ未経験の方も必見。フィンランドに住み、サウナ文化研究家として活動中のこばやし あやなさんに本場のサウナ習慣や楽しみ方、世界をめぐるサウナ旅など、その魅力を教えていただきました。(画像提供:こばやしあやな)
フィンランド・サウナ体験の核心は、水風呂よりサウナ室そのもの
フィンランド人のサウナは、日本人にとってのお風呂そのもの。街なかのサウナ施設やジムだけでなく、家にもあればホテルやオフィスにだってある。サウナを楽しむフィンランド人が最も重視するのは、サウナ室の居心地の良さです。室内温度は60〜80度と、日本と比べるとかなりマイルド。室内には焼け石がたくさん積まれたストーブがあって、入浴中はそこに柄杓で水を打って、ロウリュと呼ばれる蒸気を噴出させます。熱々の蒸気は、入浴者の素肌を心地よく刺激しながら室内を駆け巡り、すぐに収束します。30秒〜1分に1回は水を打ち、流動する熱刺激の繰り返しで体感温度を上げながら気持ちよく発汗するのが、本場のサウナ体験の肝なのです。フィンランドでは、日本のようにサウナの直後に冷水に浸かることは重視されず、少なくとも自宅や施設サウナのそばに人工的な水風呂はありません。サウナが湖や海など天然の水風呂の眼の前という立地なら、火照った体のクールダウンや大自然との一体感を味わうために夏でも冬でも入水します。
サウナ室の居心地が良いから、長居できるし、お喋りもはずむ
熱すぎないサウナでロウリュを頻繁に楽しむことで、サウナ室内は湿度が上がり、肌のヒリつきを抑制できます。またフィンランド・サウナは室内により多くの酸素を取り込む設計になっているので、長居しても息苦しさを感じずにすむのです。こうした環境設定のおかげで、フィンランド人はサウナの中で、ただリラックスするだけではなく、誰かとお喋りするのが大好き。とくに公衆サウナ(フィンランド版の銭湯)では、身も心も裸になれる環境に居合わせた客同士のたわいないスモールトークから友人へのシリアスな相談ごとまでが繰り広げられ、とにかく賑やか。まるで日本人にとっての夜の居酒屋みたいな存在と言えるかもしれません。
「入り方」にマニュアルはない、自身の気分と心地よさ最優先で!
もっとも安全で心地よいサウナの入り方(入浴時間、温度、頻度など)は人それぞれであり、自分自身で最適解を見つけるしかありません。同じ施設のサウナを利用する場合でも、日によって体調や感じ方は異なりますから、その日その日のベストな心地よさを優先して入ってください。フィンランドのサウナ室には壁時計が存在しませんが、「いつでも自分の心身の声に耳を傾けなさい」と教えられます。熱すぎると感じたら、より温度の低い下段ベンチに移動するか、早めに切り上げて水風呂で火照りを冷ます。水風呂に極端な冷たさを求める必要はなく、苦手ならスキップしたってOK。気候や風が気持ちいい日ならいつもより長めに外気浴をしてリラックス度を増やし、もっと入りたいと感じるときだけまたサウナに戻れば良い…という具合です。
常識やルールがまったく異なる日本のサウナは、どうやって楽しむ?
多くの日本のサウナではコロナ後もなお「黙浴」が推奨されていて、その分、個々人が自分だけの世界に没入してじっくり汗をかき、リラックスするのに向いています。日本のサウナは概して高温設定で、水風呂との温度のコントラストがもたらす快楽の享受に重きを置きます。熱々のサウナと強冷の水風呂を行き来して極端な温度刺激に身をさらしてから休息すると、全身がディープリラックス感に包まれます。最近では「ロウリュ」のサービスを楽しめるサウナも増えており、広いサウナ室ではスタッフが大きなタオルで熱気を撹拌させる「アウフグース」サービスも定番化しつつあります。さらに水深や水質にこだわった水風呂、植物を使ったトリートメントやマッサージサービス、貸し切り専用のプライベートサウナなど、驚くほど多様化していますので、イメージにとらわれず自分好みの施設を見つけてまわるのも日本サウナならではの楽しみ方ですね。
自分好みのサウナを見つける!
全国のサウナ施設検索サイト「サウナイキタイ」
https://sauna-ikitai.com/
世界に出れば、民族や文化の数だけ新しいサウナ体験が待っている
異国の別文化の入浴スタイルが気になったら、思い切って海外のサウナや温浴施設を目指して旅してみるのをオススメします。私は国内外問わず「面白そうな入浴文化を持った国/街」という観点から旅先を選び、観光の合間にローカルたちの集まる公衆浴場を訪れることを旅行のルーティーンにしています。世界には、気候風土や伝統文化に根ざした、驚くほど多様なスタイルや楽しみ方のサウナ(蒸気浴)が存在しています。その国のカルチャーを垣間見つつ、ローカルたちと温かい交流ができるのも、旅先サウナの醍醐味。ぜひサウナを通じて世界の広さと多彩さを感じてみてもらいたいなあと思います!
こばやし あやな | Ayana Kobayashi
フィンランド在住コーディネーター。サウナ文化研究家。
フィンランド・ユヴァスキュラ大学人文学部で「フィンランド公衆サウナの歴史と意義」をテーマに執筆した修士論文がフィンランド国内で話題になり2016年同大学院修士課程を首席で修了。卒業後はコーディネート業務の傍ら、サウナ文化のエキスパートとして日フィン両国のメディア出演や講演活動、諸外国の浴場文化のフィールドワークを続けている。著書に『公衆サウナの国フィンランド』『クリエイティブサウナの国ニッポン』(ともに学芸出版社)、訳書に『究極のサウナフルネス』(東洋経済新報社)。
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