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社宅の知識

【社宅の規程と運用を考える】第4回 社宅の広さについて パート1 日本の住宅政策と民営住宅の広さについて

【社宅の規程と運用を考える】第4回 社宅の広さについて パート1 日本の住宅政策と民営住宅の広さについて

社宅の規程や運用に悩むご担当者様のため、様々なデー夕や記事を、ハウスメイトが培った豊富な実務経験を元に読み解く連載第4回、社宅の広さについて考えてみたいと思います。


住生活を考える上で広さは重要なファクターですが、公平性の観点から無制限に広い物件は社宅として認められず、

・実際に流通している賃貸物件のトレンド
・所得税法に係る各種規程
・社会保険料に係る各種規程

それぞれの要素を加味し、複合的に考える必要があります。
長くなるので3回に分け、パート1では国土交通省と総務省のデータを元に、
流通している賃貸物件の広さについて見ていきましょう。

社宅規定上、広さについては

・間取りで定めるケース
・面積(平方メートル)で定めるケース

のどちらかのパターンで上限を設けるケースがほとんどですが、今回は面積(平方メートル)を基準にデータを見てみましょう。

住生活基本計画 居住面積水準とは

住宅の面積を考える上で、押さえておきたいポイントがあります。

下記の表は2006年に制定された住生活基本法に基づく、住生活基本計画で定める面積の水準です。

【 】内は、3~5歳児が1名いる場合
資料:住生活基本計画(平成23年3月15日閣議決定)より抜粋

日本の住宅政策の変遷について

日本の住宅政策は、終戦直後、住宅数が絶対的に不足していたところからスタートします。

その数、推定なんと420万戸…!
2015年の神奈川県の世帯数が397万世帯、大阪府が392万世帯なので、日本全体で神奈川県か大阪府の世帯数と同数の住宅が足りていなかったことになります。
人口で考えると、当時は現在と比べて一世帯当たりの人数が多いため、一世帯5人と仮定すると、当時の全人口が8千万人程度なので、
国民の4分の1に該当する人が住宅難に遭遇していた計算になります。

戦後の住宅政策の変遷を年表にまとめると…

資料:国土交通省 住生活基本計画 平成27年度 政策レビュー結果(評価書)よりポイントのみ抜粋
『(参考)その年の主なできごと』はハウスメイトにて補足


2006年に策定された住生活基本計画は5箇年に1回の見直しを行いながら、現在も日本の住宅政策の基本になっています。

ちょっと脱線した小ネタですが、戦前は大都市の8割が借家・都市部で住宅を所有する者は少数派で、『個人が家を所有するという』のは戦後に形成された価値観なんだそうです。戦後に一般的になった恋愛結婚と同じですね。

さて、お固い話が続きましたが、実際のところ市場に供給されている物件の面積は広くなっているのでしょうか?

延べ床面積の推移

下記のグラフは国土交通省のデータから、民営住宅のみを抜粋して作成したものです。

厳密な話をすると『給与住宅(=企業や官公庁等が所有又は管理する住宅に、職務の都合上又は給与の一部として居住している場合)』というカテゴリーがあるのですが、民営住宅と比較すると数が少なく、また社有社宅が含まれると市場に供給される賃貸物件との乖離が発生するため、今回は除外して『民営住宅』のみをグラフ化しました。


先にご紹介した住宅政策の変遷の通り、確かに長期トレンドで見ると延べ床面積が広くなっているのが分かります。

ここで注意が必要なのが『単身世帯が増加しているのに延べ床面積は上昇トレンド』という点です。

前回(第3回)で日本の世帯数は単身世帯や外国人住民の増加により、2020年まで増加傾向が続いており、国立社会保障・人口問題研究所の推計では、日本の世帯数は2023年の5,419万世帯まで増加が続くとなっております。

ここで国勢調査の結果から、過去の世帯人員別の世帯数の推移を見ていきましょう。

世帯人員別一般世帯数の推移

下記のグラフは国勢調査の結果を元に、一般世帯を世帯人員別に5つに分け、年を追うことにどのように世帯数が推移したかのグラフです。
(青の折れ線グラフは、1世帯当たり平均人員を示しています)


1人の世帯と2人の世帯の増加が目立ちます。それに合わせて1世帯当たり平均人員も下降しています。
次に、上記グラフを割合にしてみます。


1960年では40%を超えていた5人以上が2015年では僅か6.8%に、4人世帯も22.7%→13.3%まで下降、3人世帯は1970年から2015年まで大きな変動無く18%前後で推移していますが、2015年時点で1人世帯が34.5%と一番多く、次に2人世帯が27.9%、この2つの分類だけで合わせると60%を超えます。


1戸当たりの延べ床面積は広くなっているのに、1世帯当たりの人員が減っている、ということは、1人が使用している面積が広くなっているということになります。たとえば社宅規程で「単身者の社宅は29平方メートル以下」と定めているようなケースがありますが、総務省統計局の住宅・土地統計調査の内、建設の時期別1住宅当たり延べ床面積のデータを見てみると、一部の都道府県で29平方メートル以下の比率が下がっているケースもございます。

今回のコロナ禍において、多くの方が住環境に対する意識の変化があったと思われます。
社宅規程を見返し、『本当にこの面積設定でいいのだろうか?』とお悩みになられたご担当者様も多かったのではないでしょうか?

一方、『では無制限に広くすればよい』というものでもありません。


次に問題となってくるのが、所得税法等に係る規定と社会保険料に係る規定です。

パート2は社宅と所得税・住民税との関連についてお伝えしたいと思います。

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