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前園真聖さんインタビュー/B.LEAGUEは日本のバスケを変えた

前園真聖さんインタビュー/B.LEAGUEは日本のバスケを変えた

Jリーグの黎明期からプロサッカー選手として活躍し、アトランタオリンピックでは代表チームのキャプテンとして「マイアミの奇跡」の感動を日本中に届けた前園真聖さん。現役引退後はサッカーの解説や普及活動に取り組みながら各種メディアでも人気を集め、テレビ番組での取材企画がきっかけで、Bリーグと深く関わりを持つようになったといいます。
そんな前園さんに、Bリーグの魅力についてお話を伺いました。

──前園さんといえば「サッカー」というイメージがありますが、バスケットボールのBリーグについても特命広報部長を務めるなど、積極的に情報を発信されていますね。Bリーグのどんなところに魅力を感じますか?

Bリーグの試合では、選手を間近に感じることができます。実際にアリーナ(試合会場)に足を運ぶと、選手の息遣いや声が熱気として伝わってくるんです。サッカーのスタジアムで観戦するのとは、また違った魅力を感じますね。

──あこがれの選手を、手の届きそうな距離感で応援できるのは、バスケットボールファンの特権かもしれませんね。ほかにも、サッカーとは違った面白さを感じる点はありますか?

バスケットボールには、シュートがどんどん放たれる特有のスピード感があります。サッカーはじっくりボールを回すこともできますが、バスケットボールには「オフェンスの際、24秒以内に必ずシュートを打たなければならない」というルールがあるんです。24秒という短い時間の範囲で、攻守が目まぐるしく入れ替わるので、見ていて飽きることがありません。ブザービーターといって、試合終了を告げるブザーと同時にシュートが入って勝敗が決することもあります。選手はもちろん、観戦しているほうも、最後の1秒まで気を抜けないんです。
また、サッカーはどんなふうに点が入っても1点には違いないのですが、バスケットボールは一気に3点入ることもあります。
点が入る形もいろいろなバリエーションがあって、そんなところもサッカーとは違った面白さではないでしょうか。

──Bリーグは今期で6回目のシーズンを迎えました。前園さんはBリーグを発足当初から取材されていますが、これまでにどのような変化がありましたか?

最初は手探りのスタートで、関係者の方々にはさまざまな苦労があったと思います。当時、熊本ヴォルターズというチームの取材をしたのですが、熊本地震からまだ3カ月という時期で、自分たちの練習よりも、まず地域の復興を考えるような状況でした。地域のチームとして、何ができるのか。そんなことをみんなで考えながらの立ち上げだったので、深く印象に残っていますし、ずっと応援しています。
熊本に限らず、当初はなかなか環境が追いつかないチームも多かったのですが、Jリーグも最初はそうでした。発足から7年で、だんだん環境が整ってきて、自分たちのアリーナを持つチームもこれから増えてくるでしょう。
選手たちも、 Bリーグの発足以来、とにかく一生懸命にやってきました。その結果、2019年に富樫勇樹選手が日本人初となる1億円プレーヤーになりました。富樫選手のようなスター選手の存在は、Bリーグの発展に欠かせません。
バスケットボールは、もともと競技人口が多いスポーツで、学校の部活動でも盛んにおこなわれています。Bリーグが発足し、スター選手も誕生して、バスケットボールに取り組んでいた子どもたちは、大きな目標ができたのではないでしょうか。日本各地にクラブがあるので、「いつかは地域のチームで活躍したい」という思いを抱いた子どもたちも多いでしょう。Jリーグが発足したときのサッカーもそうだったのですが、目指すべき場所ができたことは、その競技をする人たちにとって、非常に重要な意味を持ちます。

熊本ヴォルターズのホームゲームに駆けつけた前園さん。地震の際に先頭に立って支援活動をおこなった小林慎太郎選手(当時・昨シーズン限りで引退)と握手を交わす。写真提供:熊本ヴォルターズ

──スター選手の話が出ましたが、前園さんが注目している選手を教えてください。

まずは、なんといっても富樫勇樹選手ですね。チャンスをつくって、自らも点を取るプレースタイルが、ぼくの選手時代と重なるところもあって、いつもプレーを楽しみに見ているんです。身長もぼくと同じくらいで、バスケットボール選手のなかでは小柄ですが、スポーツをしている子どもたちのなかには、彼の活躍を見て、体格に恵まれなくてもトップ選手になれるんだと勇気をもらった子も多いでしょうね。
富樫選手のほかにも、田中大貴選手や比江島慎選手など、日本代表のメンバーには当然注目しているのですが、いまリーグを引っ張っている人たちだけではなく、若い選手にも期待したいですね。Bリーグをさらに活性化させるには、今度どんどん若い選手が出てきて、いまのトップ選手に追いつき、追い越していく必要があります。
そういった意味では、富樫選手たちに続くような存在として、東海大学の河村勇輝選手に注目しています。河村選手は特別指定選手という制度を利用して、高校生のときからBリーグでプレーする逸材です。
Bリーグができたことでプロを本気で目指す人が増え、河村選手のように高校や大学に籍を置きながらBリーグの試合に出場する選手があらわれました。そうやってBリーグのレベルが高くなれば、海外からも有望な選手が集まり、さらにリーグのレベルが向上して、ひいては日本代表の強化にもつながるんじゃないかと期待しているんです。

──2021-22シーズンも終盤に差し掛かってきましたが、今後の見どころを教えてください。

今期も優勝経験のあるチームを含め、強豪が激しい戦いを続けていますが、ぼくは上位のチームだけではなく、下位のチームの奮闘にも注目しています。
この時期、優勝を争っているチームは、下位のチームには負けられません。しかし、下位のチームも次のシーズンを見据えた戦いがあります。上位のチームは「勝って当たり前」と思われがちですが、下位のチームも瀬戸際といった状況で必死に食らいついてくる。そこで勝ち星を落とさないのが、優勝するチームということになります。勝ち点の重みが増してくる時期だけに、下位のチームの戦いぶりにも注目すると面白いですよ。

──来期は、今期見送られたB1からB2への降格もおこなわれる予定で、下部組織も含めた昇降格をめぐる戦いも熱くなりそうですね。

Bリーグが今後、10年、20年と続いていくなかで、そのレベルや価値がますます高まって、いっそう熱い戦いを見せてくれることを期待しています!

Bリーグのさらなる発展に向け、今後、続々とアリーナの建設が予定されている。画像は神戸港に建設予定の新アリーナで、西宮ストークスが本拠地を移す方針。写真提供:株式会社One Bright KOBE


前園 真聖 |  Masakiyo Maezono

1973年、鹿児島県生まれ。
高校卒業後、横浜フリューゲルスに加入し、Jリーグの初年度からプロとして活動。U-21日本代表チームのキャプテンを務め、28年ぶりの出場となった96年のアトランタオリンピックではブラジルを破る「マイアミの奇跡」を達成。97年のヴェルディ川崎への移籍を経て、ブラジル、韓国と海外でもプレー。引退後は各種メディアでも活躍し、現在は情報バラエティー番組『ワイドナショー』(フジテレビ系)などに出演中。

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