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社宅の知識

【人事・総務のための福利厚生】《連載⑤》社宅規程の重要ポイント再点検~入居までの期限、入居期間と退去

【人事・総務のための福利厚生】《連載⑤》社宅規程の重要ポイント再点検~入居までの期限、入居期間と退去

社宅管理のご担当者・責任者の皆さんに、福利厚生に関する情報をさまざまな角度からお届けする「人事・総務のための福利厚生」。5回目となる今回は、前回に引き続き、社宅規程の見直しについて説明します。

社宅規程の見直しの必要性

この連載では、トラブルを未然に防止できるよう社宅規程の重要な事項について点検します。必要に応じてアップデートしてください。今回は入居までの期限、入居期間と退去に関する規定を点検します。

入居までの期限

入居までの期限とは、入居社宅が決定してから入居までの期限です。

転勤に不満のある者や入居予定社宅に不満のある者が、入居を意図的に遅延する懸念があります。そのため、入居する社宅が決定してから、実際に引っ越すまでの日数や期限日を定めます。これを超えたら、「会社が認めた場合を除き、入居を取り消す」と規定することもあります。

また、入居予定者がそのまま退職する懸念もあることから、「退職日までに会社が負担した家賃は入居予定者の負担とする」と規定し、入居予定者にあらかじめ通知しておくことも考えられます。賃貸借契約を締結しても入居されないと事業主が家賃のみ支払うことになってしまいますが、規定がないと請求が難しいためです。

入居期間の上限

一般に一つの社宅に対する入居期間には、上限が定められます。『旬刊福利厚生』(2021年1月上旬号(2311号))の調査では、80%の社宅管理規程で上限が規定されています。

8~10年の上限を定めます。上限を経過しても転居転勤がない場合は、個人契約への切り替え、退去または社宅賃料の全額本人負担とします。入居期間の経過につれ、段階的に社宅使用料を引き上げる規程もあります。入居期間の累計は、転勤する都度、ゼロクリアされます。

上限または引き上げの根拠は、転勤により発生する経済的および精神的な負担が、入居期間の経過につれ、次第に軽減するためです。

一部の企業では、従業員の家族のライフプランやワーク・ライフ・バランスを阻害しないよう転居転勤を減らそうとする動きもあります。そうなると入居期間は長くなりがちで、入居期間上限も見直しが必要です。

社宅定年

入居期間の上限を入居期間ではなく入居者の年齢、つまり所定の年齢に到達したら社宅を退去するという規程もあります。社宅定年と通称されます。

これは、事業主の社宅費用負担が過重にならないようにする以外に、「持ち家支援」にも関連します。

福利厚生施策として、「従業員に持ち家を持たせる」ために持ち家支援を掲げている事業主では、社宅を提供して従業員の住宅費軽減に努める一方、住宅ローンの返済年数を勘案して、40歳または45歳を厚生社宅の入居年齢の上限としています。

これは持ち家を購入するキッカケとなります。老後に持ち家がなく家賃を負担し続けるのは老後生活設計のうえから望ましくないためです。

一方で、老後は親の残した家に住むという方もいるため、持ち家推進だけでは不十分かもしれません。

退去

転勤や社宅定年等以外の退去事由としては、通勤可能な自宅の購入、事業主の了解を得ないで長期間にわたり社宅に居住していない、離婚等により同居家族がなくなった、社宅の管理上故意または重大な過失により事業主に損害を与えた、風紀・秩序を乱す言動等が考えられます。

また戸建て社宅では、他の入居者の目がないことから、民泊への転用、配偶者がネイルサロンを経営、従業員が息子夫婦を入居させ、自分たちは賃貸住宅を借りるといった例もあります。

これらが発生した際は、退去を求めることができるよう、前回の連載でもお伝えしたように社宅入居誓約書に具体的な事態を想定して記述する等、多様な事態を想定した規程の整備が望まれます。

執筆者

千葉商科大学会計大学院会計ファイナンス研究科 教授
株式会社労務研究所 代表取締役/福利厚生専門誌『旬刊福利厚生』発行
企業や官公庁における福利厚生制度のコンサルティングを行う。福利厚生や企業年金などをテーマとした著書、寄稿、講演多数。


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